殺人鬼フジコの衝動/真梨幸子 徳間文庫

殺人鬼フジコの衝動/真梨幸子 徳間文庫

殺人鬼フジコの衝動/真梨幸子
2011/5/15初版、徳間文庫(2008/12、単行本)

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか? 精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する……!」。

いや~、ただただ気が滅入る。もう、どうしようもないほど根が深い、心が暗くなる読後感……いや、読んでいる最中から「闇」しかない作品だ。

人から嫌われたくないばかりに人の顔色ばかり見て嘘に嘘を重ね、負のスパイラルに陥る主人公・フジコ。そしてそれを自分の中で正当化して、ついには殺人を重ねるように……。日常生活において誰もが持ち得る感情のため、読んでいて非常に感情移入しやすい。しかし、多くの人はそれを乗り越え、フジコのような道は辿っていない。でも、一歩間違えば……とは思うものの、これはあまりにも極端過ぎる展開。まあ、中にはそんな人もいるかもしれないが。

高津区一家惨殺事件

さてさて、この小説はちょっとした趣向が凝らしてあり、「あとがき」までがフィクションの小説。小説の冒頭で「川崎市S区Fという街」という場所が出てくるが、このあとがきによると実は川崎市の高津区なのだそうだ。そして、あとがきを小説と切り離し一般的な「あとがき」として読んだ人は、昭和46年10月26日に起きた通称「高津区一家惨殺事件」を本当にあった事件と勘違いしているらしい。

そんなわけで大学卒業後の独身時、4年ほど高津区の溝の口で暮らした僕としては、その高津区が舞台の1つでもあるため違った意味で非常に気になる作品でもある。昭和46年だと東急田園都市線は高架になっているから踏切があるということはJR南武線。すると、フジコが小学校5年生時に住んでいたマンションは武蔵新城~武蔵溝ノ口~津田山~久地の線路沿いということになる。学生時代に同級生、後輩、バイト先の上司が住んでいて、月に何度も訪れたこともあり、自分が暮らした4年間も含めると、かなりの土地勘が自分にはあるのだ。

それにしても、こんなダークな作品が50万部を超すベストセラーになるとは。嫌な気分を味わいたい方は、ぜひ! また、ちょっと違った意味で嫌な気分を味わうには「最悪/奥田英朗」もお薦めです。さて、続編とも言える「インタービュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」も読まねば(^^)。

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