幸せの条件/誉田哲也 中公文庫

幸せの条件/誉田哲也 中公文庫

幸せの条件/誉田哲也
2015/8/25初版、中公文庫(2012/8、単行本)

恋も仕事も中途半端、片山製作所勤務の「役立たずOL」梢恵に、ある日まさかの社命が下された――単身長野に赴き、新燃料・バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた24歳に勝算はあるか!? 働くこと、生きることの意味を問う、『ジウ』シリーズ著者による新境地。〈解説〉瀧井朝世
今度のヒロインは、農業女子 誉田哲也史上、最弱キャラ!?
人生も、田んぼも、耕さなくっちゃ始まらない
『ジウ』『ストロベリーナイト』の著者が放つ感涙長編」。

 

ドラマ、そして映画化もされた「ストロベリーナイト」の姫川玲子シリーズを始め、警察小説で人気を博しているエンターテインメント作家、誉田哲也さん。氏の作品で僕が好きなのは、警察と裏世界との息詰まる攻防を描いた「ジウ」だけれども、警察小説以外のジャンルも執筆し、今回の「幸せの条件」もそちらの作品。異常犯罪はおろか登場人物が死ぬようなこともなく、舞台は農業。「ストロベリーナイト」や「ジウ」などと比べると、至ってほのぼのとしております(笑)。

作品としては、何も目的を持たず、ある意味、ダラダラといい加減な生活を送っていた主人公が農業と出会って生きがいを見つけ、人間として成長するという物語。よくあるストーリーで、大筋としては可もなく不可もなく……。しかし、農家の生活、農業の手順などが詳細に描かれ、福島県に農家の親戚がいて、また、仕事で農業関係のナレーションを何本も読んだことで、普通の人よりは農業の知識があると思っていた僕が、実は「農家の生活、そして農業について何も知らなかったんだ!」ということに気付かされた。その上で、農業の知識や日本の食料自給率などについても知ることができ、非常にタメになった。

また、2011年3月11日に起きた東日本大震災を話に絡めているのだが、これがややくどい。作者が東日本大震災によほどの衝撃を受け、原子力発電、放射能のことを1人でも多くの人に伝えたいと思ったのだろうということが、とてもよく分かるほど東日本大震災のくだりが実に熱く、しつこいくらいに書かれている。ここが、もう少しあっさり書かれていたら、僕としては、また違った評価になっていただろう。

それにしても、今後、TPPの問題など、農家にとってさらに厳しい現実が待っているかもしれないと思うと、誉田哲也さんのようにファンを多く持つベストセラー作家に農業をテーマにした作品を書いてもらい、多くの人に農業に付いて知ってもらいたいと切に願う。

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